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アパレル業界の現状と在庫課題

更新日:8月1日

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*本コラムは、2025年6月19日に実施した「儲けを創る事例満載!アパレル経営セミナー」の内容を抜粋したものです。


司会: 本日はありがとうございます。アパレル産業の課題と解決策について深掘りします。河合様、トランプ関税の影響はあまりないということですが、もう少し詳しく教えてください。


河合氏: まずは、日本のアパレル産業の現状分析から始めますと、日本のアパレル業界の平均プロパー消化率は30~40%とされ、諸説ありますが、市場規模約8兆円に対し、毎年約4兆円分の商品が過剰在庫として売れ残っていると言われています。投入商品をほぼ売り切る企業もあれば、売れない企業もあり、企業の経営力とブランド力で、この余剰在庫の課題解決効果は変わるでしょう。また、繰り返しになりますが、私はマーケットとしての日本に対してきわめて悲観的で、米国と取引をしている企業は数えるほどで、ビジネスチャンスは東南アジアに移りつつあると考えています。これが、トランプ関税の影響はあまりないという根拠です


司会:仮に、米国との取引をやっている、あるいは、検討しているアパレルの対策として、コスト構造からどこにどのようなアプローチするのが効果的でしょうか。

飛田氏: 1万円の定価商品で、仕入れ値が2,000~3,000円の場合、原価部分の改善はトランプ関税の影響でもリテール価格対比にすると、数%程度と伸びしろが少ない。一方で、販売価格の最適化に目を向けるべきです。1万円の商品が20~50%オフとなれば、最終価格は1,000~3,000円単位となり、販売価格側の最適化の方がインパクトが大きいと私は考えています。


河合氏: その通りで、各アパレル企業は2、3年前から「値引き抑制」に注力しています。これまでは一律大幅値引きでしたが、セール時でも、売れる商品には極端な値引きをせず、値引き率を変えたり、在庫を一時的に引っ込めたりと工夫し、ある程度の改善が見られます。20年ほどコンサルタントとして50社ほどに関わってきましたが、ほとんどの会社で在庫が問題となっており、その処方箋は1990年のピーク時から何も変わっていませんです。したがって、デューデリジェンスではまず在庫を見ることで、課題の本質に最短でたどり着けることがほとんどですます。


飛田氏: 在庫には二つのパターンがあります。

• パターンA(欠品回避による過剰在庫): 過剰在庫を減らすことでまずキャッシュフローが改善しますが、利益は倉庫費用や管理コスト削減から生じます。また、魅力のない過剰な商品がお店に溢れ、本来魅力的な商品が置けない「隠れた売り逃し」が生じるため、商品の最適化に伸びしろがあります。

• パターンB(欠品許容、過剰在庫回避): シンプルに、売り逃しがなくなることで売上が上がります。


国内生産の持続可能性と競争戦略

司会: 次に、国内縫製会社様からのご質問です。「海外生産が主流の中、国内生産を続けるべきか、あるいは生産量調整のためだけに国内生産を行うのは生産側としてやっていられない、という状況でどうすべきか」という問いです。

河合氏: エコノミクスが成り立つなら、無理にやめる必要はありません。

「付加価値」をつけることが重要です。島精機の「ホールガーメント」(1本の糸で服を丸ごと作る日本の技術)も欧州で広まり、スポーツウェア分野で自動化による国内回帰の動きもあります。人件費の安さを求める「南下政策」から脱却し、自動化や高付加価値化へ舵を切るべきです。もう、この界隈ではアフリカに南下して、最後は広告のように無料になるというぐらいコスト競争に未来はありません。実際、C2Cの個人間取引が伸びています。


コミュニケーションとコンプライアンスも重要です。日本の多くのアパレル企業は商社を介していますが、これは外国語や外国人マネジメントの難しさが一因です。また、日本の繊維業界では工程ごとに会社が独立し、国内取引の80%が電話での口頭指示で契約書がないケースも散見され、これは海外では通用しません。今後は、海外にマーケットは移ってゆくでしょうから、インボイス発行や決算手段など、海外では常識になっているコンプライアンスを重視した運用を学ぶ必要があるでしょう。忙しくなるなら、デジタル化を検討すればよい。今、RPAという自動ロボットを使えば、100-200万程度で相当大きな業務負荷を減らすことが可能です


飛田氏: 国内縫製工場は、ボリュームやコストで競争することは難しいでしょう。その前提で、「信頼性」と「柔軟性」を武器にしていくことが鍵です。

• 信頼性: 納期遵守、品質保持など、当たり前だが実現が難しいことを徹底する。

• 柔軟性: 日本語対応、急な仕様変更への対応、短納期での対応など。これらは遠隔地で大量ロットを安価に生産する工場が対応したがらない領域であり、ここを「逆張り」の競争力に変えるのが一つの方法です。


司会: ありがとうございます。技術的な競争力に加え、信頼性と柔軟性が、国内工場が競争力をつけていく上でのポイントなのですね。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。

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