「セレクト×リユース」流行を超えて“循環”をデザインする
- akikoobata
- 10月27日
- 読了時間: 3分

アパレル業界は今、大きな転換点を迎えている。
かつては「新作を次々に投入し、売り切る」ことが主流だったが、
過剰在庫・廃棄・環境負荷といった構造的な課題が浮き彫りになった。
消費者の価値観も変化している。
“安くて新しい服”よりも、“長く愛せるもの”“背景の見えるブランド”を選ぶ時代へ。
この潮流をいち早く感じ取り、「流行をつくる」から「循環をつくる」へと舵を切ったのが、セレクトショップをはじめとするアパレル各社だ。
BEAMS “活かし切る”というデザイン
デッドストック品をアップサイクルし、新たな価値を吹き込む。
2021年にスタートしたBEAMSの『ReBEAMS(リ・ビームス)』は、その象徴的な試みだ。経年や在庫の都合で販売できなくなったアイテムを、バッグやポーチなどに再構築。
一つひとつが異なる素材や色で仕立てられ、世界に一つだけの表情を持つアイテムとして生まれ変わる。
この取り組みは、単なる再利用ではない。
“廃棄を出さない”という意識を超えて、
「活かし切ることがデザインである」という新しい価値観を提示している。
ファッションを「消費」から「再創造」へと変える発想こそ、ReBEAMSの真髄だ。
UNITED ARROWS 服の命をつなぐという美意識
ユナイテッドアローズは、サステナブル活動「SARROWS」を通じて、
2030年を見据えた明確な目標を掲げている。
循環型ファッションの推進、カーボンニュートラルの実現、
そして「人間らしい生活」を軸とした事業活動の再定義だ。
一枚の服の背景にある、素材・生産・流通・再利用という“循環の全体像”に責任を持つという姿勢。
それは「服を売る会社」から「服の命をつなぐ会社」へと変わろうとする決意でもある。
ファッションの持つ“文化性”と“持続可能性”を両立させる道を、ユナイテッドアローズは静かに歩み始めている。
SHIPS お客様と共に創る循環の輪
2025年7月、株式会社シップスは
公式リユースECサイト「SHIPS CYCLE MARKET」をオープン予定。
スタッフやお客様が着用した衣料品を回収し、
検品・メンテナンスのうえで「SHIPS認定リユース品」として販売する。
再販が難しい商品はリサイクルへ回し、資源循環を推進する仕組みを整えた。
「もう着ない服」を“新しい楽しみ”へと変えるこのプロジェクトは、
まさにセレクトショップならではの“審美眼のリユース”。
お客様と一緒に“次の一着の物語”を紡ぐという姿勢が、そこにはある。
ユニクロ・無印良品 マスから広がる循環のうねり
一方、マスブランドでも同様の潮流が加速している。
ユニクロは「RE.UNIQLO」プロジェクトを通じて、
全国の店舗で不要になった衣料品を回収し、リユース・リサイクルを推進。
再資源化された素材は、新しいダウンやジャケットとして再生される。
“リユースを前提としたモノづくり”という思想が、世界規模で広がりつつある。
無印良品もまた、回収・再販・修理を一体化した「
リユース・リペア・リサイクル」活動を展開。
“長く使えることが良いデザイン”という理念のもと、
家具や衣料、生活雑貨を循環させる取り組みを進めている。
ここにも、消費から共生へのパラダイムシフトが見える。
循環こそが、新しいスタンダードへ
こうした動きが示すのは、単なる環境対応ではなく、
ファッションそのものの再定義だ。
BEAMSが火をつけ、ユナイテッドアローズとSHIPSが深化させ、
ユニクロと無印が社会全体へとひろげている。
もはや「リユース」は一過性のトレンドではない。
ファッションの価値は、作られた瞬間ではなく、
もう一度、選ばれた瞬間にこそ宿る。
いま、セレクトショップとマスブランドがともに起こしたこの変化は、
業界の未来を導く“循環のスタンダード”になっていくだろう。


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