Z世代が変えるアパレル経営の常識予測ではなく、“流れ”で在庫を動かす時代へ

yoshikonakamura
10 時間前
読了時間: 3分

■ はじめに

アパレル業界は今、かつてないスピードで変化しています。その中心にいるのが「Z世代（1997年以降生まれ）」です。彼らは、モノの“価値”よりも、その背後にある“ストーリー”や“体験”を重視し、ブランドや商品との関わり方を根本から変えています。この世代の消費行動の変化は、単にトレンドの話にとどまらず、在庫・供給・サプライチェーン構造そのものを問い直す動きへとつながっています。本稿では、Z世代がもたらす3つの大きな変化と、それに対応するための在庫運用の新たな考え方についてお伝えします。

1. 「物語」に共感して買う時代へ

Z世代にとってファッションとは、単なる自己表現の手段ではありません。彼らはブランドの理念や社会的メッセージ、職人の背景など、“ストーリー”に共感して購買を決める傾向が強くあります。たとえば、環境負荷を抑えた素材選び、地域との共創、職人技の継承などがブランド選定の重要な判断軸になっています。こうした価値観の変化は、“大量生産・大量販売”モデルの再考を迫るものです。

2. 多様性と即応性が求められる構造

Z世代の購買行動には「多様性」と「流動性」というキーワードが見られます。性別や価格帯、ブランドの境界を越えて、自分らしいスタイルを自由に組み合わせる“編集的購買”が主流になりつつあります。この結果、SKU（品番）やバリエーションは急増し、在庫構造は年々複雑化しています。さらにSNSの影響により、特定アイテムが“バズる”ことで突発的な需要が発生し、店舗やEC在庫の偏在を引き起こしています。一方で、在庫移動や追加生産の判断は多くの場合“勘と経験”に依存しており、売れているのに欠品、動かないのに過剰という“二重苦”が生まれています。

3. 限定・小ロット・カスタム　変化への即応が鍵

Z世代は「限定」や「カスタマイズ」に強い魅力を感じます。一方で、これらの企画はリードタイムが短く、供給リズムを柔軟に変えることが求められます。ここで重要になるのは、“在庫をどう減らすか”ではなく、“在庫をどう流すか”という視点です。変化のスピードが上がるほど、静的な在庫基準では対応が難しくなります。

多様性とスピードが交差する時代

Z世代の購買行動は、これまでの「シーズン」「カテゴリ」といった枠組みを軽々と越えています。SNSのひとつの投稿で流行が変わり、昨日の定番が今日の過剰在庫になる。そんなスピードの中で、私たちはいかに“遅れない在庫運用”を実現できるかが問われています。

ここで大切なのは、在庫を「静的な数字」ではなく「流れる情報」として捉えること。在庫は止まっているように見えて、実は企業の呼吸のように循環しています。

Z世代の台頭によって、アパレル業界は再び大きな転換点を迎えています。求められているのは、感性と科学の融合、つまり、デザインの美学と在庫の流れを両立させる新しい経営モデルです。在庫を制する者が、ブランドを強くする。次の成長をつくる第一歩を、共に描いていきましょう。