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売り逃し

「売り逃し」は、アパレル企業における重要な経営課題です

アパレル企業において「売り逃し」とは、顧客が購入を希望していたにもかかわらず、該当商品が欠品していたために販売の機会を失ってしまうことを指します。この現象は一見見過ごされがちですが、企業にとっては極めて深刻な影響をもたらす経営課題です。


◆ 「売り逃し」がもたらす影響

最も直接的なのは、売上機会の損失です。商品が手に入らないことで顧客は購入を断念し、その分の売上はゼロになります。特に人気商品における売り逃しは、粗利の高い定価販売のチャンスを失うことにつながります。


次に、利益の減少です。欠品による機会損失に加え、代替商品の提案や再販のためのマーケティングコストが発生し、利益率は低下します。一方で、売れ筋商品が足りない状況では過剰在庫の発生リスクも高まり、セールや値引きによる消化が必要となる場合もあります。


さらに、顧客ロイヤルティの低下も深刻です。欲しい商品が買えなかった経験は顧客の不満を生み、次回以降の来店意欲を損なうリスクがあります。リピーターの獲得機会を失うことは、中長期的な経営において大きなマイナスとなります。


また、ブランドイメージへの悪影響も無視できません。欠品が頻繁に発生すると、「欲しい時に買えないブランド」という印象を与えてしまい、ブランドの信頼性が損なわれます。


最後に、機会損失の波及効果です。欠品によって売り場やECサイトの魅力が低下し、他の商品への“ついで買い”やコーディネート提案などの販売効果も弱まります。


◆ 売り逃しを防ぐための改善策

このような「売り逃し」を防ぐには、需要を的確に捉え、在庫を最適に配置し、迅速に補充できる体制を構築することが不可欠です。以下は代表的な施策です。


1.リアルタイム在庫の可視化と最適配置

 店舗・倉庫・ECすべての在庫を一元管理することで、販売機会を逃さない体制を整えます。偏在を避けるために、店舗間移動や自動補充の仕組みを活用することが効果的です。


2.売上トレンドに基づく即時補充

 売れ行きのトレンドを早期に察知し、スピード感のあるフォロー補充を行います。商品ごと・店舗ごとに異なる基準在庫をきめ細かく設定し、適切な在庫数を維持することが求められます。シーズン終盤で倉庫に在庫がない場合には、店舗間移動で販売機会を最大化します。


3.ECと店舗在庫の統合(オムニチャネル化)

 ECで在庫が切れていても、店舗在庫から出荷できる仕組み(店舗出荷型EC)や取り置きサービスなどを導入し、機会損失を回避します。


◆ なぜ売り逃しの改善が重要なのか?

売り逃しは、在庫過多と同様に企業に損失をもたらす重大な要因です。重要なのは、「売れた数」だけでなく、「本来売れたはずの数(潜在需要)」を捉えること。そして、それに基づいて在庫運用を見直すことが利益改善への第一歩です。


この売り逃しは、見えにくい損失ではありますが、改善できれば追加投資なしで利益を増やす最大のチャンスとなります。欠品は単なる在庫切れではなく、顧客の期待を裏切る行為であり、ブランド価値や将来の売上までも損なう可能性があるのです。


これからのアパレル企業は、売上トレンドをリアルタイムで捉え、「売れる場所に、売れるときに、売れる商品を」届ける仕組みと体制の整備が求められます。この体制は属人的ではなく、誰がやっても同じように結果が出せるプロセスが何より重要です。

在庫は単なるコストではなく、利益を生む資産であり、その運用次第で企業の収益力は大きく変わるのです。

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