面積当たり売上高
① チェーンストア経営における「面積当たり売上高」
多店舗展開するアパレル・チェーンにとって、売場 1 ㎡ が年間いくらの売上を生むかを示す「面積当たり売上高」は、**フォーマットの健全性と資本効率を一目で判定できる“体温計”です。旗艦店の派手な数字や不採算店の極端な赤字に惑わされず、チェーン全体の中央値(P50)を基準線にすれば、改装・撤退・出店の優先順位が定量的に見えてきます。特にアパレルはシーズン変化が激しく在庫リスクが高いため、面積効率のわずかな悪化がキャッシュフローを一気に圧迫します。「㎡あたりの生産性=在庫投資の健全度」**と捉えることが、チェーンを“売れても倒れない”体質へ導く第一歩です。
② 「面積当たり売上高」の定義と基本的な解説
面積当たり売上高(円/㎡/年)
= 年間売上高稼働売場面積\text{面積当たり売上高(円/㎡/年)}
= \frac{\text{年間売上高}}{\text{稼働売場面積}}面積当たり売上高(円/㎡/年)
=稼働売場面積年間売上高
売場面積は“実稼働面積”で測る:バックヤードや倉庫を含めず、顧客が商品を閲覧できる純粋な陳列面積を使う。
中央値で管理する:平均値は旗艦店のバイアスが大きいため、P50 を「普通の店」、P75 を「優秀店」の基準に。
粗利や在庫回転とセットで読む:㎡売上が高くても在庫が膨らんでいればキャッシュアウトが先行する。スループットの質を見るには、粗利率・在庫回転日数と三点セットでモニタリングする。
TOCの要諦は“フロー速度”の最適化です。売場面積が広くてもキャッシュ還流が遅ければ資本は眠ります。面積当たり売上高を「1㎡が現金に戻るまでの日数」で再計測し、遅いカテゴリを特定→補充リードタイム短縮や委託販売化で現金化速度を揃えると、チェーン全体のフローが滑らかになり追加投資なしでROICが向上します。さらにバッファ・マネジメントを導入し、回転が鈍る前兆を色信号で店舗と本部が共有すれば、在庫切らさずキャッシュ固着も防止。これがTOC流“面積効率×資金効率”の両立策です。