EC化率
EC化比率(=EC売上比率)は、収益性・成長性・業務効率を測る重要な経営指標です。
以下の観点から特に重要とされています。特にコロナ禍の影響でオンラインショッピングの需要が高まり、アパレルEC市場は急速に拡大しました。
アパレル小売市場全体に占めるオンライン販売の割合は、2024年時点で27.5%とされ、2029年までに34.8%に増加すると予測されています。
EC比率上昇のメリット
1. 売上拡大:時間・場所に縛られず全国・海外へ販売可能
2. 販促最適化:顧客データ活用でパーソナライズ施策が可能
3. コスト削減:店舗費用を抑え、利益率向上
4. 顧客資産化:購入データ蓄積でLTV最大化につながる
5. 成長スピード加速:低コストで事業を拡大しやすい
しかしEC化比率の上昇には多くのメリットがある一方で、以下の要因から最終利益が思うように伸びないという課題も顕在しています。
EC化率上昇の主な課題
1. 在庫管理の複雑化 – チャネルごとに在庫が分散し、全体で非効率に。
2. 返品率の高さとコスト負担 – 試着できず返品が増え、コストと再販負荷が上昇。
3. 価格競争の激化・値引き圧力 – 他社比較が容易で値下げ圧力が強まり、利益圧迫。
4. 物流負荷・コスト増 – 個別出荷・梱包が増え、業務量と配送コストが上昇。
5. チャネル間のカニバリゼーション – 店舗とECで同一商品を扱う場合、売上の取り合いが発生し、チャネル間の対立・利害調整が課題になる場合も。
6. 複数ECチャネルの管理が複雑 - 自社ECに加え複数のECモールがあり、管理や在庫配分が複雑になる。
上記のうち特に重要な在庫分散は以下の課題が発生します
1. EC専用在庫と店舗在庫の分離運用
・ 店舗には在庫があるのに、ECには在庫がない(=機会損失)。
・店舗と複数のECチャネルで在庫を持つために、全体の在庫量が膨らみやすい。
2. 販売チャネル別の販売 予測と補充設計
・店舗とECで個別に需要の予測・発注をしていると、どちらも「保守的に」多めに在庫を持つ傾向になりやすい。
3. 返品・再販在庫の流動性の低さ
・ ECで返品された商品を、再販せず倉庫に眠らせてしまうと実質的な死蔵在庫になる。
------------------------------------------------------------------------------------------
特に外部モールを活用する場合は以下に留意する必要があります。
外部モールにおける在庫の特徴と課題
1. 在庫の「預け型」か「直送型」かで異なる
・ 預け型(ECモール在庫型):商品をECモールの倉庫にあらかじめ納品
→ 在庫は物理的にもECモール側に存在=別在庫扱いになる
・ 直送型(受注後に自社倉庫から発送):在庫は自社内にあり、受注後に発送
→ システム上分離 されていれば、これも在庫分散につながる
2. 在庫の分散が生む課題
・どのチャネルにどれだけ在庫を割くかの判断が難しい
o 売れる商品をECモール用に確保した結果、自社ECで欠品 → 機会損失
・ 全体最適が難しくなる
o ECモールの売れ残り在庫は自社ECや店舗で転用しにくい(特に預け型)
・在庫の死蔵化リスク